「今日はどのナッツバターにされますか?」——4つのナッツバターの話
麻布十番の駅から少し歩いたところに、私たちのお店はあります。網代公園の向かいの、小さな店舗です。
扉を開けると、ナッツを焙煎した香ばしい匂いがします。棚にはガラス瓶が並び、奥には搾りたてのナッツバターがゆっくりと瓶に落ちていく機械が見えます。初めていらっしゃった方は「こういうお店だったんですね」と、少し意外そうな顔をされることが多いです。
KINOMINOでは、ピーナッツ・アーモンド・ピスタチオ・くるみの4種類のナッツバターを作っています。すべて、ご注文を受けてからひと瓶ずつ搾ります。
お客さまのなかには、月に一度、決まったナッツバターを買いにいらっしゃる方がいます。逆に毎回違うものを試す方もいますし、4種すべてを常備しているという方もいらっしゃいます。食べ方も皆さんそれぞれ違っていて、私たちのほうが教わることも多い日々です。
この記事では、4つのナッツバターそれぞれの味わいと使い方の違いについて書きました。店頭でお客さまにお伝えしていることを、そのままここに置いておきます。「どれにしよう」と迷われたときに、お役に立てればうれしく思います。
ピーナッツバター——いちばん素朴で、いちばん力強い
最初にお伝えしておきたいのは、KINOMINOのピーナッツバターは甘くないということです。砂糖も植物油脂も加えていないので、子どもの頃に食パンに塗った、あの甘いピーナッツバターとはかなり印象が異なります。
蓋を開けた瞬間は素朴に見えるかもしれません。でも口に含むと、千葉県産ナカテユタカ種の落花生の香りが、ゆっくりと、しかしはっきりと広がります。
4種のなかで、パンに塗ってそのまま食べたときの満足感がいちばん大きいのはピーナッツバターです。トーストに塗るだけで朝ごはんとして成り立つ力強さがあります。
食べ方の幅も広く、バナナとの組み合わせ、ドレッシングのベース、担々麺のスープに溶かすといった使い方をされている方もいらっしゃいます。あるお客さまは味噌汁に小さじ1杯加えてコクを出しているそうで、試してみたところ、たしかにおいしいものでした。
無糖のピーナッツバターは、甘い味付けをしていない分、食事との境界がありません。パンの上ではおやつのような顔をして、鍋の中では調味料になる。そういう自在さが、ピーナッツバターのいちばんの取り柄だと思います。
こういう方に
朝ごはんをしっかり食べたい方。パンとコーヒーだけの朝食に、もうひと手間だけ加えたいけれど、時間はかけたくないという方。それから、お料理のレパートリーをちょっと広げてみたい方にも。エスニック料理がお好きな方は、ピーナッツバターが調味料として手放せなくなるかもしれません。
アーモンドバター——毎日手が伸びる、静かなおいしさ
アーモンドバターの味を言葉にするのは、少し難しいところがあります。ピーナッツバターのような力強いインパクトがあるわけではなく、ピスタチオバターのような華やかさがあるわけでもない。口に含んでから、飲み込んで、それから「おいしいな」と静かに思う。そういう味わいです。
ただ、店頭でいちばんリピート率が高いのは、実はこのアーモンドバターです。
理由はおそらく「毎日食べても飽きない」こと。味が穏やかで、朝のパンにも、ヨーグルトにひとさじ落としても、バナナと牛乳でスムージーにしても、いつでも食卓に馴染みます。気負わずに瓶に手が伸びる——そういう種類のおいしさです。
以前、オンラインショップでアーモンドバターを注文してくださった方から、「子どもが気に入ってしまって、毎朝これじゃないと食べないんです」というお声をいただいたことがあります。砂糖が入っていないのでお子さまにも安心してお出しいただけるのですが、ナッツの香ばしさだけでちゃんとおいしいので、甘いスプレッドに慣れたお子さまにも受け入れられることがあるようです。
ビタミンEが豊富で美容面でも注目されるナッツですが、栄養の話よりも先に、まずはこの穏やかな味を試していただければと思います。初めてナッツバターを買われる方に、店頭でまずおすすめするのはアーモンドバターであることが多いです。
こういう方に
食べるものに気を遣っているけれど、ストイックにはなりたくないという方。添加物の少ないものを選びたいけれど、「おいしい」がいちばん大事という方。それから、朝のスムージーやオーバーナイトオーツに何か加えたいと思っている方にも向いています。アーモンドバターをスプーン1杯加えるだけで、いつもの一杯にコクと腹持ちが生まれます。
ピスタチオバター——蓋を開けたとき、少しだけ空気が変わる
ピスタチオバターの瓶を初めて開けたとき、まず目に入るのは色です。抹茶ともオリーブとも違う、ピスタチオにしかない淡い緑色。
それからスプーンですくって口に入れると、ナッツとは思えないほどの濃厚な風味が広がります。初めて召し上がった方は、少し間を置いてから「……おいしい」とおっしゃることが多い。あの数秒の静けさが、この商品のいちばんの褒め言葉だと思っています。
先日、お店に来てくださった方が、ピスタチオバターを召し上がったあとに「これ、自分用と、母に送る用と、二つください」とおっしゃいました。聞けば、離れて暮らすお母さまもピスタチオがお好きなのだそうです。ご自分が先に味を確かめてから贈り先を決める——そういう買い方をされるお客さまは少なくありません。
ピスタチオバターは、あまり凝ったことをしないほうが持ち味が活きます。バニラアイスにひとさじ。クラッカーに薄く塗って、生ハムを一枚。ちょっと贅沢をしたい夜に、ワインを開けるきっかけにもなります。
贈り物として選ばれることも多い商品です。蓋を開けたときの色の美しさ、口にしたときの味の深さ。「こんなものがあるんですね」という驚きをお届けできるので、大切な方への手土産にも向いています。オンラインショップからギフトボックスでお送りすることもできますので、遠方の方への贈り物にもお使いいただけます。
こういう方に
頑張っている自分に何かひとつ、小さなご褒美を用意したい方。一日の終わりに甘いものが欲しいけれど、ケーキやチョコレートほど重くなくていい、という方にはぴったりだと思います。それからギフトをお探しの方。相手の方が健康を気にされていても、甘いものが苦手でも、お酒を飲まれない方でも、ピスタチオバターなら喜んでいただけることが多いです。「何を贈ればいいかわからない」というときの、ひとつの答えになれたらと思います。
くるみバター——台所で静かに働いてくれるもの
くるみバターは、4つのなかで少し異なる立ち位置にあります。
パンに塗ってそのまま食べるという用途では、正直なところ、ピーナッツやアーモンドのほうがわかりやすいおいしさだと思います。くるみバターにはやや渋みがあり、最初のひと口で心をつかむタイプではないかもしれません。
けれど、このくるみバターをお料理に使うと、途端に頼もしい存在になります。
めんつゆに大さじ1杯溶かすだけで、くるみ蕎麦ができます。味噌と合わせて焼きおにぎりに塗る、白和えに少量加えてコクを出す、カレーの仕上げにひとさじ入れてまろやかにする。調味料として棚に置いておくと、思いのほか出番の多いナッツバターです。
くるみバターをお買い上げくださる方は、お話を伺うと料理好きな方の比率がとても高いです。「ほうれん草のくるみ和えを作るとき、すり鉢で擂るのが大変で」という方が、くるみバターに替えてみたら楽になったと教えてくださったことがあります。すり鉢の手間がスプーンひとさじで済む。考えてみれば当たり前のことですが、台所に立つ方にとっては小さくない違いなのだと思います。
お客さまから「こんな使い方をしました」とお聞きする機会がいちばん多いのもくるみバターで、そのたびに新しい発見をいただいています。
こういう方に
普段からお料理をされる方で、献立にちょっとした変化がほしい方。新しい調味料を試すのが好きな方。和食をよく作る方にはとくにおすすめです。くるみ蕎麦、くるみ和え、くるみ味噌——どれも昔からある料理ですが、くるみバターがあると驚くほど手軽に作れます。それから、オメガ3脂肪酸を食事から摂りたいと考えている方にも。ナッツのなかでオメガ3を豊富に含むのはくるみだけです。
4つを並べて、改めて思うこと
こうして書き出してみると、4つのナッツバターはそれぞれ性格がまったく違います。
ピーナッツは毎日の主食のそばに。アーモンドは暮らしに静かに溶け込む。ピスタチオは特別な時間を作ってくれる。くるみは台所の奥で出番を待っている。
どれがいちばん優れている、ということはありません。暮らし方や食べ方は一人ひとり違うので、合うナッツバターも違って当然です。ただ、もしどれかひとつを試して「おいしいな」と感じていただけたら、いつか別の種類にも手を伸ばしてみてほしい、とは思います。ひとつ目とはまた違う驚きがあるはずです。
まとめ買いで4種をすべて揃える必要はありません。まず1本。食べてみて、なくなったらまた選ぶ。その繰り返しのなかで、自分にとっての定番が見つかっていくのだと思います。
迷われたときの、ひとつの目安
店頭でもよくお尋ねいただくので、目的別のおすすめをまとめておきます。
毎日の朝ごはんに
ピーナッツバターかアーモンドバター。しっかりした味がお好みならピーナッツ、穏やかな味がお好みならアーモンドを。
贈り物をお探しの方に
ピスタチオバター。見た目の美しさと味の特別感があるので、差し上げた方に喜んでいただけると思います。
お料理に取り入れてみたい方に
くるみバター。くるみ蕎麦から試していただくのがいちばん手軽です。
まず1本、試してみたい方に
アーモンドバター。パンにも、ヨーグルトにも、お料理にも使えて、いちばん守備範囲の広い味わいです。
粗さについて
ナッツバターの粗さは、SMOOTH(なめらか)、MEDIUM(中間)、CRUNCHY(粗め)の3段階からお選びいただけます。
パンに塗って食べるならCRUNCHYがおすすめです。ナッツの粒が残っていて、噛むたびに食感が楽しめます。お料理に使うならSMOOTHが馴染みやすく扱いやすい。どちらにも使いたい場合はMEDIUMが程よいバランスです。
オンラインショップでも、ご注文時にお好みの粗さをお選びいただけます。お選びいただいた通りに、お店で搾ってからお届けしています。
届いた瓶を開けたら
KINOMINOのナッツバターは、砂糖も植物油脂も保存料も使っていません。
しばらくすると瓶の上部に油の層ができることがあります。これはナッツ自体から出た良質な油脂ですので、よくかき混ぜてからお使いください。慣れないうちは少し驚かれるかもしれませんが、添加物を使っていないナッツバターには自然に起きることです。むしろ、油が分離するということが、ナッツ以外のものが入っていない証でもあります。
Regularサイズは約100gです。毎朝パンに塗って使うと、2〜3週間ほどで食べきれる量になります。ナッツ100%のバターは少量でも味が濃いので、見た目以上にしっかり持ちます。お料理にも使われる方や、ご家族で召し上がる方はLargeサイズのほうが気兼ねなくお使いいただけると思います。
ナッツバターのある朝の話
少しだけ、私たちの日常の話をさせてください。
お店の営業が始まる前に、スタッフがその日のナッツの状態を確認する時間があります。焙煎の香り、豆の色、搾ったときのペーストの質感。同じ産地のナッツでも、季節や気温でわずかに表情が変わります。それをひとつずつ確かめてから、お店を開けます。
地味な作業です。お客さまの目に触れることはほとんどありません。でも、瓶の蓋を開けたときに「あ、おいしそう」と思っていただけるかどうかは、この目に見えない時間にかかっていると思っています。
オンラインショップで届く瓶のなかにも、その朝の空気が少しだけ入っています。届いた箱を開けて、蓋を回したとき、ナッツの香りがふわっと立ちのぼったら——それが、麻布十番の小さなお店から届いたものだと、感じていただけたらうれしく思います。